「動画を作ったほうがいいと言われるけれど、何に使えばいいのかわからない」。そんなときは、SNSに投稿することだけを考えなくても大丈夫です。
動画は、商品の説明、来店前の案内、商談の準備、購入後の使い方にも活用できます。
動画マーケティングとは、動画を使って、お客様の理解や行動を助ける取り組みです。この記事では、少ない人数と限られた予算で、何を作り、どこで使うかを整理します。
仕様と調査の数字は元資料が2026年10月7日に確認した情報に基づきます。活用例や手順は提案で、成果を保証するものではありません。
動画マーケティングは、動画の使い道まで考えること

動画制作は、企画・撮影・編集をして動画を完成させる作業です。動画マーケティングでは、誰に見てもらい、どこに掲載し、その後どう行動してもらうかまで考えます。
さらに、使った結果も確認します。
お店のチラシも、印刷しただけではお客様に届きません。配る場所や、予約の案内を決める必要があります。
動画も同じように、完成させる前に、使う場所と目的を決めることが大切です。
料理をきれいに撮るだけでは、予約方法は伝わらない
飲食店の動画なら、おいしそうな料理は大切な見どころです。ただ、それだけでは「どこにあるか」「予約できるか」「自分の利用場面に合うか」がわからないこともあります。
集客に使うなら、料理の魅力に加えて、利用場面、店舗情報、予約方法をつなげましょう。
動画の種類を、仕事の目的で選ぶ
- 商品・サービス説明:内容、対象者、利用の流れを伝える。商品やサービスのページで使います。
- 実演・使い方:調理、工具の使い方、画面操作を見せる。YouTubeや商品ページで使います。
- よくある質問への回答(FAQ):料金条件、納期、準備物を説明する。質問ページや相談前の案内で使います。
- 顧客の声・導入事例:利用した背景や評価をインタビューで伝える。事例ページや営業資料で使います。
- 店舗・施設紹介:入口、席、設備、利用の流れを見せる。地図、店舗ページ、SNSで使います。
- 専門知識の解説:選び方、比較、注意点を説明する。YouTubeや記事で使います。
- 動画広告:広告枠を使って商品や相談サービスを知ってもらいます。
- 営業・提案動画:提案内容や見積もりを説明する。商談前後のメールなどで使います。
- オンライン説明会(ウェビナー):まとまった説明や質問への回答を行う。開催後の録画も活用できます。
- 購入後の案内:初期設定、手入れ、操作方法を説明する。サポートページや購入後のメールで使います。
これは実務向けの分類と架空の活用例です。一つの動画が複数の役割を持つ場合もあります。
動画サービスを提供するWistiaも、小規模事業者向けに商品説明、オンライン説明会、よくある質問への回答を提案しています。2022年7月29日の記事なので、現在の機能や料金の根拠ではなく、使い方の参考として紹介します。
Wistiaによる小規模事業者向けの動画活用案
文字で確認したほうがよい情報もある
動きや工程、店内の様子は、映像で伝える意味があります。一方、料金一覧、細かい仕様、住所、注意事項は、文章でも確認できるようにしましょう。
動画を最後まで見ないと申し込む条件がわからない状態は避けます。
商品そのものの問題や、使いづらい予約ページ、問い合わせに対応できない体制は、動画だけで解決できません。まずは「説明や判断材料が不足しているのか」を確認してください。
SNS・ホームページ・地図・営業で使い分ける

掲載場所は、流行しているかどうかだけで選ばなくても大丈夫です。「お客様が、どの場面でその情報を必要とするか」で考えましょう。
店頭、相談席、購入後の窓口で案内を変えるのと同じです。
掲載する場所ごとの使い方
- YouTube:比較、実演、よくある質問など、疑問への回答と詳しい説明に使う。視聴後の案内も決める。
- Instagram・Facebookなど:商品の利用場面、店内、スタッフを紹介する。公開前に各サービスの仕様を確認する。
- 自社ホームページ・申込用ページ:サービス説明、事例、実演で比較や申し込みを助ける。料金と条件は文字でも掲載する。
- Google ビジネス プロフィール:Googleの検索や地図に表示される店舗情報で、外観、入口、店内、商品を見せる。
- 商談前後の案内:提案、事前準備、導入手順を説明する。顧客情報を誰が見られるか管理する。
- 購入後の案内:設定、使い方、手入れを説明する。変更後に古い説明を残さない。
これらは使い方の提案です。掲載場所ごとの効果を保証するものではありません。
店舗は、地図で探している人への動画も検討する
初めてのお店では、入口や店内が見えないと入りづらいことがあります。飲食店なら入口から席まで、美容室なら受付や施術スペースを見せる企画が考えられます。
Google ビジネス プロフィールの動画の公式要件は、最大30秒、最大75MB、720p以上です。MBはファイルの大きさ、720pは映像の解像度を示す数字です。
掲載まで最長24〜48時間ほどかかる場合があります。動画を追加すれば検索順位が上がるとは、元資料から断定できません。
Google公式の店舗動画の掲載要件
動画の投稿と、動画広告は予算を分ける
動画広告を使う場合は、制作費とは別に広告を配信する費用も必要です。広告の形式によって、動画の長さや料金が発生する条件が変わります。
Google広告の、視聴者が途中で飛ばせる動画広告は、再生から5秒後にスキップできます。視聴に応じて支払う方式では、30秒の視聴、30秒未満の動画を最後まで見た場合、またはそれ以前の操作などが課金条件になります。
別の方式では表示回数に基づく課金になります。短い「バンパー広告」は6秒以内です。
Google公式の動画広告の種類・長さ・課金条件
広告は冒頭から、誰向けで何を伝えるのかを示す構成を試しましょう。通常の投稿をそのまま使えるかも、広告の形式に合わせて確認します。
最初の1本は、お客様が迷っている場面から選ぶ

「どんな映像なら格好よいか」より、「お客様がどこで迷っているか」を考えてみてください。お客様への説明が足りない場所を、一つ選ぶと企画を決めやすくなります。
困りごとと動画を結びつける
- サービス内容が伝わらない:対象者と利用の流れを説明し、内容に合う問い合わせが来たか確認する。
- 使い方が伝わらない:商品を実演し、購入や質問内容を確認する。
- 初来店の不安がある:店舗や施設を紹介し、予約や来店時の反応を確認する。
- 同じ質問を繰り返し受ける:質問への回答を動画にし、説明時間や質問内容を確認する。
- 商談前の理解が足りない:事前説明を用意し、商談内容や説明時間を確認する。
- 購入後に使い方でつまずく:初期設定や操作を見せ、サポート内容や利用開始状況を確認する。
この組み合わせは、制作と成果確認のための提案です。自社の状況に合わせて選んでください。
撮影前に埋めたい8つの項目
- 対象者:誰に見てもらうか。
- 状況:購入・相談・来店の前後、どの場面か。
- 疑問:その人が知りたいことは何か。
- 答え:動画で伝える結論は何か。
- 映像:実物や手元など、何を見せるか。
- 掲載場所:どのページやサービスで見てもらうか。
- 次の行動:見た後に何をしてもらうか。
- 成果の確認:何を記録して役立ったか判断するか。
例えば工務店なら、「初めて相談する人」に「相談前に図面が必要か」を説明する企画です。資料の例を見せ、相談ページに掲載し、予約や準備物の確認へ案内します。これは架空の例です。
一度撮った説明を、必要な場所で使う
Wistiaは、自社のオンライン説明会の録画をホームページに掲載し、開催後も見られるようにしていると説明しています。SNSやメール向けに短い部分を切り出す活用も提案しています。
Wistiaの説明会録画の再利用に関する解説
小規模事業者でも、質問への説明を一度撮り、詳しい動画は質問ページへ、要点はSNSへ、準備の説明は申込後の案内へ使い分ける案があります。確認済みの内容を文章にして、記事やメールに使う方法も考えられます。
ただし、短く切り出した素材だけを見ても誤解がないか確認しましょう。必要な条件や注意点を削らないことが大切です。
自作・部分外注・一括外注を、負担に合わせて選ぶ

すべて自分で作るか、すべて外注するかの二択にしなくても大丈夫です。飲食店で仕込みと接客を分担するように、動画づくりも作業ごとに分けて考えられます。
どこまで自社で行うかを決める
- 自作:手順や質問への回答を、自社で企画・撮影・編集・確認する。担当者の作業時間も記録します。
- 部分外注:編集など、負担の大きい工程を依頼する。自社は目的設定、素材の準備、内容確認を担当します。
- 一括外注:構成や撮影の進行から支援を受ける。自社は商品情報、出演者の調整、内容確認を担当します。
素材が足りない問題は、編集だけでは補えない場合があります。何を撮る必要があるかは、撮影前に共有してください。
費用は撮影日数、場所、出演者、アニメーション、編集量、修正回数などで変わるため、一律の相場は示していません。
見積もり依頼で伝えること
- 目的、対象者、掲載場所、希望する長さ。
- 必要な本数と、縦・横などの納品形式。
- 撮影場所、出演者、自社で用意できる素材。
- 字幕、ナレーション、図解が必要か。
- 修正回数と公開希望日。
- SNS・広告・ホームページなど、完成後に使う範囲。
- 元データの納品や、更新対応の有無。
同じ「動画1本」でも、含まれる作業は違います。金額だけでなく、条件をそろえて比較しましょう。
AIは下書きや作業の補助から使う
AIは、お客様の質問の分類、構成案、台本の下書き、文字起こし、字幕原稿、紹介文の作成などに使う方法が考えられます。料金、製品仕様、制度、実績、顧客の発言は、人が元資料と照らし合わせて確認します。
未公開の顧客情報や図面を入力する場合は、使うサービスがデータをどう扱うかも確認してください。
YouTubeでは、台本・構成・タイトルや字幕作成などの制作補助は、AI利用の開示が不要な例に含まれます。一方、実在人物がしていない発言や行動をしたように見せる映像、実際の場所や出来事の改変、実際には起きていない現実的な場面の生成などは、開示の対象です。
YouTube公式のAI生成・改変映像の開示ルール
AIで作った施工例や顧客の声を、自社の実績として扱わないようにしましょう。AIを使ったという理由だけで、すべて同じ扱いになるわけではありません。
再生数・問い合わせ・費用を分けて成果を確認する
動画を見た人数は大切ですが、それだけでは仕事への効果はわかりません。チラシを配った枚数と、そこから来たお客様の数を分けるように、動画の反応と事業の成果を記録します。
目的に合わせて、確認する数字を変える
- 知ってもらう目的:届いた人数や視聴に加え、対象地域・対象顧客との接点ができたか。
- 理解してもらう目的:どこまで見られたかに加え、問い合わせ内容や説明時間がどう変わったか。
- 予約・相談の目的:リンクへの移動に加え、予約数、相談数、受注を確認する。
- 購入の目的:商品ページへの移動に加え、購入数と、売上から仕入れなどを引いた粗利益を確認する。
- 購入後の支援:案内動画の利用に加え、質問内容や対応時間を確認する。
サービスによって、数字の意味は異なります。同じ名前だからといって、そのまま比較しないようにしましょう。
海外調査の数字は、効果を保証する数字ではない
動画制作会社Wyzowlの2026年版調査では、制作した動画の種類として、SNS動画69%、説明動画68%、顧客の声57%、商品実演39%、営業動画37%、顧客サポート動画24%などが報告されています。
「動画はSNSだけ」というわけではないことを考える参考になります。
同調査で動画の実施者は、商品・サービスへの理解向上に93%、見込み客の獲得に85%、売上増加に83%、サポート問い合わせの削減に57%が役立ったと回答しています。
ただし、これらは回答者の自己申告です。動画だけの効果を比較実験で証明した結果ではありません。
調査は2025年後半に、マーケティング担当者とオンライン消費者を含む266人へ実施されました。266人全員が動画の担当者ではなく、事前質問で回答対象を分けています。
設問ごとの人数、地域、企業規模、対象者の選び方の詳細は参照ページで確認できていません。日本の中小企業全体の利用率や成果として読むことはできません。
費用に対する効果(ROI)が良好とした回答は82%です。ただし、その判断には視聴回数67%、反応63%、見込み客・クリック52%、売上32%などが使われています。
「82%が費用を回収した」「動画で必ず利益が増える」という意味にはなりません。
Wyzowlの2026年版動画マーケティング調査
支出に加え、社内の作業時間も記録する
撮影・編集・広告に払った費用と、企画、準備、出演、確認、更新に使った時間を記録します。利益への効果を見るなら、売上だけでなく粗利益も確認しましょう。
架空の試算では、制作・配信の総費用が5万円で、動画経由と判断した受注の粗利益が8万円なら、単純に費用を引いた差額は3万円です。
ただし、ほかの集客施策の影響、受注までの期間、社内作業の費用を含めたかによって評価は変わります。
公開前と運用中の確認項目
- 掲載場所、案内文、次の行動まで用意したか。
- 会社の説明だけでなく、お客様の疑問に答えているか。
- 掲載先の表示形式や、見る場面に合っているか。
- 再生数に加えて、問い合わせや購入、説明の負担も確認しているか。
- 料金や仕様が変わったときに更新できるか。
- 実績の条件や個人差を省略していないか。
- 人物、名札、書類、図面、個人情報の映り込みを確認したか。
- 音楽や素材を、広告や別の掲載先でも使えるか確認したか。
まずは、お客様の迷いを一つ選び、その疑問に答える動画を1本作りましょう。使う場所、視聴後の案内、成果の確認方法を先に決めます。
実際の負担を確かめ、必要なら編集などの一部を外注し、続けられる方法に調整していきます。
