「口コミの少ない店」はGoogleマップの周辺検索から消える ― 実験で見えたMEOの盲点

MEO
目次

はじめに

「グルメを探す」「周辺のおすすめを見る」——今やGoogleマップだけでなく、AI検索やアプリ内の「周辺検索」機能を通じて、ユーザーは無意識のうちに何らかのアルゴリズムが選んだ候補の中から店を選んでいます。

今回、Google Maps Platform の Places API (New) を使って「目的地周辺のグルメ・観光名所を表示するツール」を試作する中で、ある小さなドーナツ専門店がどうしても検索結果に出てこないという現象に遭遇しました。原因を一つずつ潰していく過程で見えてきたのは、「圏内にあって」「カテゴリも合っていて」「営業中」でも表示されないことがある、というMEO担当者にとって見過ごせない仕組みでした。

この記事では、その検証の時系列と、そこから導き出される実務的な対応策をまとめます。

検証の舞台

  • 検索の中心地:大将軍八神社(京都市上京区一条通御前西入)
  • 見つからなかった店:TWO SEVEN-O DONUTS(同じ一条通沿い、神社から約163m)
  • 使用したAPI:Places API (New) の Nearby Search / Text Search

検証タイムライン

ステップ1:まずは「カテゴリ不足」を疑う

最初のツールは「ランチ」「カフェ・スイーツ」といった限定的なカテゴリでしか検索していませんでした。「ドーナツ店は専用カテゴリがないのでは」と考え、Googleの公式タイプ一覧(Table A)を確認したところ、donut_shop という専用タイプが存在することが判明。これを検索対象に追加しましたが、それでも表示されませんでした。

ステップ2:「人気度ランキングでの足切り」を疑う

Nearby Search はデフォルトで rankPreference: POPULARITY(人気度順)で結果を返します。飲食店が密集するエリアでは、取得件数の上限に収まらず、口コミ数の少ない店が弾かれている可能性を考え、DISTANCE(近い順)ランキングに切り替え、取得件数の上限も引き上げました。それでもまだ表示されませんでした。

ステップ3:店舗単体で直接検索してみる

「そもそもGoogle側にこの店の情報が正しく登録されているのか」を確認するため、店名でText Searchを直接実行するデバッグ機能を追加。結果は次の通りでした。

  • 状態:OPERATIONAL(営業中)
  • primaryType:donut_shop
  • types:donut_shop, bakery, food_store, store, food, point_of_interest, establishment

つまり カテゴリ登録は完璧 でした。

ステップ4:距離を実測する

最後に、検索の中心地(大将軍八神社)からこの店までの正確な距離を計算。結果は 約163m。設定していた検索半径1200mの、余裕を持って内側でした。

結論:条件は全部クリアしているのに、表示されない

  • 距離:条件内(163m ≪ 1200m)
  • カテゴリ:完全一致(donut_shop)
  • 営業状態:正常(OPERATIONAL)

すべての条件を満たしているにもかかわらず、周辺検索の結果には最後まで一度も現れませんでした。

なぜこんなことが起きるのか

ここで分かったのは、Nearby Search(そしてGoogleマップの「周辺を検索」機能全般)は、圏内の店を漏れなく列挙する仕組みではないということです。rankPreference は「返すと決めた候補の中の並び順」を変えるだけで、そもそも「候補に入るかどうか」の選抜は、Google内部の関連性・知名度スコアによって別途行われています。

口コミ数が少ない、開業から日が浅い、被リンクや言及が少ない——こうした要因を持つ店舗は、条件を満たしていても選抜の時点で漏れてしまう。一方で、店名を直接指定する検索(指名検索)では確実にヒットする。この「周辺検索では漏れるが、指名検索では拾える」というギャップこそが、今回の現象の正体でした。

MEO担当者にとっての意味

この構造は、実務上かなり重要な意味を持ちます。

  • 「近くにあって」「カテゴリも合っていて」「営業中」でも、周辺検索・AI検索の候補にすら上がらない店舗が存在しうる
  • ユーザーが能動的に店名を検索しない限り、その店は「その他大勢」に埋もれたまま可視化されない
  • 食べログやYahoo!マップなど外部サイトには正しく掲載されていても、Googleの関連性スコアが低ければ「周辺のおすすめ」には出てこない

つまり、MEO対策の効果測定を「登録情報が正しいかどうか」だけで判断するのは不十分で、「関連性スコアで選抜される側に回れているか」まで見る必要があるということです。

対応策

1. 口コミの「量」と「新しさ」を継続的に積み上げる

関連性・知名度スコアにおいて、口コミ数とその更新頻度は大きな比重を占めると考えられます。単発のキャンペーンで一気に集めるより、来店のたびに自然に依頼できる導線(会計時の一声、レシートへのQRコード等)を作り、継続的に口コミが増える仕組みを構築することが重要です。

2. 口コミへの返信を欠かさない

返信率・返信の速さもエンゲージメントシグナルの一つとされています。返信文の作成が負担になっている場合は、テンプレートやAIツールで効率化し、「返信が滞る」状態を避けるのが現実的です。

3. Googleビジネスプロフィールのカテゴリ設定を厳密に行う

今回の検証で、primaryType が正しく donut_shop に設定されていたこと自体は表示の必要条件であって十分条件ではないと分かりました。裏を返せば、カテゴリ設定を誤ると、それだけで選抜の土俵にすら上がれないということでもあります。まず大前提として、実態に最も近いカテゴリを正確に選ぶことが出発点になります。

4. 写真・投稿・営業時間などプロフィールの情報鮮度を保つ

情報が更新され続けている店舗ほど「活きている」と判断されやすいと考えられます。新商品や季節メニューの投稿、写真の追加など、プロフィールを定期的に動かすことも継続的な施策として有効です。

5. 外部サイトでの掲載・言及を増やす(サイテーション対策)

食べログ・Retty・地元メディアなど、外部での店舗情報の一貫した掲載(店名・住所・電話番号の統一)は、Google側の信頼スコアに寄与すると考えられています。今回の店舗も食べログやRettyに掲載されていましたが、それだけでは周辺検索での選抜を保証するには至りませんでした。複数のシグナルを重ねていく発想が必要です。

6. 「周辺検索で拾われない」前提でSEO・指名検索対策も並走させる

周辺検索の選抜に入りきらない期間があることを前提に、SNSでの言及やハッシュタグ、地域メディアへの掲載を通じて「指名検索」を増やすことも有効な補完策です。指名検索の増加自体が、中長期的にはGoogle側の関連性スコア改善にもつながります。

まとめ

今回の検証で分かった最大のポイントは、「条件を満たしていること」と「表示されること」はイコールではない、という点です。MEO対策は登録情報の正確さがゴールではなく、Googleの選抜ロジックの中でどう存在感を積み上げていくかという継続的な取り組みだと捉え直す必要があります。

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マツイ
動画マーケティング専門家
SEO歴15年×動画制作歴13年。Web専任がいない中小企業や店舗の集客を「丸投げ」でサポートしています。登録者400万人超えのチャンネルの立ち上げ期も支援。
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